会社で働く理由
汝がたとえ世界中の財宝を全部使ったとしても、決してみんなの心を一つに纏めることはできなかったであろう。
「コーラン」 8章63節
最近、自分が会社で働く理由を考えている。
働く時間について
1週間は 24時間 * 7日 = 168時間 ある。
私が勤めている会社では平日数 * 8時間働くことが求められており、休憩がその間に1時間ある。私の場合、残業早出は平均1時間あるかないかで、通勤には往復1.5時間がかかる。よって、 ( 8 + 1 + 1 + 1.5 ) * 5 = 57.5時間 を労働または通勤に費やしている。
つまり、1週間の1/3は会社のために働いていることになる。この時間の価値が全ての働く理由の価値を上回ったとき、私にとって働くことは合理的な選択ではなくなる。
働く理由について
自分が働く理由には給与・報酬、スキルアップの機会、連帯意識の3つがあると考えている。
給与・報酬
私は資産家ではないため、食べていくには働かざるを得ない。しかし、できれば働きたくないので効率的に稼ぎたい。
会社に長くいると、働く時間が減るか給与が上がることが多い。ホワイトカラーの場合組織の仕事の多くはコミュニケーションだが、長くいると知り合いが増えたり会社の事業や業務・意思決定フローの全体像が掴みやすくなり、より短い時間で仕事に必要なコミュニケーションが取れるようになるからだ。それに従い、仕事の成果を出しやすくなり評価が上がる、もしくは評価されなかったとしても働く時間が減ることになる。
もし長くいても働く時間が減らず給与も上がらないのであれば、会社が成長していないということなので別の会社に行った方がいいかもしれない。ただし、転職するとコミュニケーションはリセットされる。
生涯年収がだいたい2億〜3億だから、そのくらい稼いだら給与は働く理由にならなさそうだ。しかし、たとえ年収1,000万円でも20~30年と考えると、かなり遠い目標だと言える。なお、厳密には累進課税があるので、1,000万円*20年と500万円*40年では後者の方が手取り額は大きくなる。
スキルアップの機会
真っ当に給与を上げるためには、市場価値の高いスキルを磨いていく必要がある。
借方と貸方が分からない人に経理の仕事を任せようとは思わない。仕事をする上で、基本となるスキルが身についていない人をわざわざ金を払って雇う会社はなかなか無い。雇用のセーフティネットとして補助金や職業訓練が存在している理由でもある。
会社にはその経験を積む機会がある。たとえば私は現職で経理として(上司の監督の下)決算や上場準備、監査や税務調査の対応など幅広い業務をやらせてもらったが、これはそれなりに市場価値が高いスキルなのではと思っている。会社が成長していると、このような機会はいたるところに転がっている。
自分の求める機会が会社に無くなったとき、スキルアップはその会社で働く理由にならなくなる。
連帯意識
給与や機会を増やすためには、組織が持続的に成長していく必要がある。
組織が持続的に成長するためには、その構成員が優秀なだけでなく、「成果を出す→組織が成長する→給与・機会が増える→さらに成果を出す→組織が成長する→…」というフィードバックのループを信頼していなければならない(と私は考えている)。それを作るためには、部署内・部署間・階層間で同じ方向に向かってひとつの大きな目標を追いかけ続けるという認識を共有することが重要。
急成長を遂げた「Slack」流のコミュニケーション手法とは — “点”ではなく“面”にすべし
チュニジアの歴史家イブン・ハルドゥーンは、歴史上の様々な国家・王権について、それらが強大になるのは人々のそれぞれの欲望が一つの目標追求に向かって一致し相互扶助の気持ちが強くなったときで、それを可能にするのが宗教であると言ったが、これは会社にも通じると思う。
この連帯意識が醸成されている組織では、給与面でもスキル面でも将来に対してポジティブな意識を持つことができるので、そういう会社で働きたい。私が働く理由3つの中で、これが最も交換が難しいものだと考えている(他の組織、会社の文化が自分の求めるものかを外から判断することは難しい)。
結局は給与・報酬
なのだが、年金も貰えるか分からないし長い期間働くことになりそうなので、効率よく稼ぐためにスキルアップができる・連帯意識を持てる会社で働きたい。