税務調査で誤りが見つかる割合

Ryohei Tsuda
6 min readNov 4, 2018

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国税庁は報道発表資料として、毎年様々な税金に関する統計資料を公開している。その中には、税務調査に関する統計もある。

日本では、ほとんどの直接税について1947年に申告納税制度が導入され、納税者が自ら税務署へ所得等の申告を行うことにより税額が確定し、この確定した税額を自ら納付している。国税通則法に基づいて、税務当局にはこの申告内容が正しいかを質問・検査する権限が認められている。

このような質問・検査は一般的に「税務調査」と呼ばれることが多い。この税務調査において、「申告内容の誤り」が見つかる割合はどのくらいあるのだろうか。

要約

  • 税務調査で申告内容の誤り(非違)が見つかる割合は約60% ~ 80%
  • 相続税に非違が見つかる割合は平成28事務年度で82%と非常に高い
  • 調査1件あたり追徴税額が最も多いのは相続税で、平成28事務年度で約591万円

「事務年度」について: 税務当局の事務年度は毎年7月〜翌年6月となっている。事務年度の終わりには大きな人事異動が行われることが多いらしい。

法人税・法人消費税

平成28事務年度(2016年7月〜2017年6月)の調査事績の概要はこちら

法人税については、97千件中72千件で約74%で非違があったことになる。調査1件あたりの追徴税額は約180万円。

一方、法人消費税は下記の通り93千件中55千件で、約59%で非違があった。調査1件あたりの追徴税額は約80万円。消費税が法人税と比べて非違の割合が少ないのは、税制がシンプルで解釈の余地が少ないからだと考えられる。

所得税・個人消費税

平成28事務年度の調査事績はこちら

所得税の非違発見割合は647,144件中400,467件で約62%、調査1件あたりの平均追徴税額は約17万円だった。

個人事業主の消費税は86,779嫌中61,049件で約70%で、調査1件あたりの平均追徴税額は約35万円。

相続税

平成28事務年度の調査事績はこちら。非違件数は12,116件中9,930件で約82%と非常に高い。調査1件あたりの追徴税額は約591万円。

税目別の10年間推移

法人課税(法人税・法人消費税)と個人課税(所得税・個人消費税)、相続税のそれぞれで「調査件数」と「非違発見割合」、「追徴税額」の推移を報道発表資料から10年分取得し、グラフにしてみる。なお、追徴税額は加算税・重加算税を含んでいる。

まずは法人への税務調査について。調査件数は2012年以降大きく減少しているが、非違発見割合は徐々に上がっている。1件あたり追徴税額は2009年の160万円を頂点として減少傾向にある。調査件数や追徴税額が減少傾向にあるのは気になる。人手不足なのだろうか?

法人税・法人消費税の税務調査

次に個人への税務調査について。調査には簡易な接触を含んでいる。こちらは調査件数は大きく変わらず、非違の発見割合は下がっている。しかし、調査1件あたりの追徴税額は(2013年に大きな下落はあるものの)20万円弱で大きく変わっていない。つまり、小さな非違を見逃してまでも大きな非違を見つけようとしているのかもしれない。

所得税・個人消費税の税務調査

最後に相続税の税務調査について。こちらも法人税と同じく、2012年に調査件数が減少している。非違発見割合および調査1件あたりの追徴税額も2013年までは減少傾向にある。相続税は1件あたりの追徴税額が450万円〜700万円と非常に大きい上に非違発見割合も他の税目に比べて高いので、対応にあたる人員数を増やすと効率的に追徴税額を上げられるのかもしれない。

厚労省の人口動態統計の年間推移によると死亡数は上がっているので、相続自体の件数は増えていると考えられる。相続税の調査件数が10年間で減少傾向にあるのは税務当局の人手不足だろうか?

相続税の税務調査

参考: 税務調査の流れ

PlantUMLのアクティビティ図を使って税務調査の流れを書いてみた。

税務調査が終わった後は当局からその結果を通知される。非違の指摘があった場合、納得するかしないかによって「更正処分(強制的に納税をさせる)」か「修正申告(自分から指摘箇所を修正して申告する)」の2ルートに分かれる。更正処分を受けた場合は通常、いったん追徴税額を納付した上で再調査請求もしくは不服審査請求を行う。

最終的には訴訟になる場合もあり、完結まで数年を要することもある。

@startuml
(*) --> "税務調査開始"
"税務調査開始" --> "税務調査終了"
if "非違の有無" then
--> [非違がなかった] "終わり"
else
--> [非違があった] "税務当局と相違点について確認"
if "税務当局と相違点について確認" then
--> [納得する] "修正申告"
if "調査結果を修正したい" then
--> [yes] 更正の請求
note left: (納得して修正申告するので)認められる可能性は低い。\n認められない場合は再調査請求か審査請求ルートへ。
else
--> [no] 終わり
endif
else
--> [納得しない] "更正処分"
if "再調査の請求をしたい" then
--> [yes] 税務当局に再調査請求
else
--> [no] 不服審判所に対する審査請求
endif
if "裁決に納得する" then
--> [yes] 終わり
else
--> [no] 裁判所に処分取消訴訟を提起
--> 終わり
@enduml

おまけ

国税庁の求人情報はこちら↓

https://www.nta.go.jp/about/recruitment/index.htm

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