事業とホームラン
よく「(事業で)ホームランを打ちたい」という言葉を聞く。
ホームラン = フルスイング、全力で振るという文脈で語られることが多い。強く振るとよく飛ぶというのは実に分かりやすい。
打席にたくさん立って強く振っていると、いつかはホームランが出そうな気がしてくる。しかし残念ながら、ホームランを期待できない打者がいい場面で打席を貰える機会は少ない。
2018年で引退した元ロッテの岡田幸文は通算2501打席で本塁打0だったが、一流の守備走塁があったので試合に出続けることができた。このようなケースは稀で、殆どの選手は人知れず引退していく。
ホームラン打者
ところで、2000年以降の日本プロ野球で最高のホームラン打者と言えば西武ライオンズの中村剛也であろう。
中村選手は数々のホームランの記録を打ち立ててきた。
- 通算400本塁打(現役最多、歴代16位)
- 本塁打王獲得6回(歴代3位)
- 満塁本塁打20本(歴代1位)
基準違反統一球が導入されていた2011年には一人である他球団の選手全員より多い本塁打、なんとリーグ本塁打の約1割を打つという凄まじい傑出度を見せた。また、怪我で離脱の多い選手だったが、2015年以前は規定打席に到達した全てのシーズンで本塁打王を獲得していた。
その中村だが意外にも(?)フルスイングは少なく、脱力しながら体重移動と回転でバットを振り、飛ぶポイント(本人曰く、「左足を踏み込んだとこの前あたり」らしい)でボールを正確に捉えて押し込む、という独特の打ち方をしている。
バットの握りは両手でしっかり握るというよりは、左手に右手の小指を被せて握っている様子。
同じスイング、同じポイント
中村選手のホームランの映像を見ていると、打球が飛ぶ方向に差異はあるものの、ほとんど同じようなスイングで同じポイントでボールを捉えているように見える。
しかし、打っている球はインコースもあればアウトコースもあり、直球もあれば変化球もある。そもそも特定の球種やコースが打てないようではこれだけ長い期間プロ野球で生きていくことは不可能なので、どんな球でも打てるというのは当たり前ではある。
脱力と環境への適応
打っている球が多岐にわたるがスイングやポイントがほぼ同じということは、中村選手が投手の投げた球に上手に適応してタイミングやバットの高さを合わせて自分がホームランを打てる体勢を作っているということだ。
それは力を抜いて打席に立っているからできることで、最初からフルスイングしようと思ったら力が入りスイングがブレてボールを正確に捉えることは難しくなるだろう。
事業とホームラン
事業でホームランを打ちたい人は、打席に立つときに力を抜いて立ってみるのがいいのではないか。
あと中村選手の練習や試合、キャンプの動画を YouTube やパリーグ TV、 DAZN 等で見るのもお勧めしたい。
打席の数
ホームランを打つ、と並んでよく聞く比喩として「三振しても打席にたくさん立つことが大事」というのもある。
これには全面的に同意したい。中村選手も本塁打王となった6シーズンのうち5シーズンでリーグ最多三振を記録しているが、うち3シーズンで打点王のタイトルを同時に獲得している。
プロ野球と違ってビジネスの世界はお金があると打席に立てるので、お金持ちになるのもありだ。そんなに稼がなくても、何年か生活に困らない程度のお金を持っているとリスクの許容度が大幅に上がるので大胆な意思決定ができるようになる(その結果、三振しまくるかもしれない)。
お金が無くても例えば中村選手と同じ西武ライオンズで活躍した平尾博嗣のように「何かやってくれそう感」があると、打席に立たせて貰えるかもしれない。
最後に
私は西武ライオンズのファンではありません。
パ・リーグでいうとホークス、セ・リーグでいうとスワローズのファンです。ちなみにホークスが本拠地を置いている福岡のヤフオクドーム最寄駅である唐人町はヤクルト発祥の地でもあります。